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 「Parachute Limit」
見渡す限りの荒野。
不毛の大地。
赤茶けた世界。

……そう、ここは世界の果て。
彼方にぼんやりと見えるあれは、都市。
華やかなりし旧世界の遺物。

こんな廃墟にも人がいる。
薄く立ち上っている細い煙が何よりの証拠。

ちきしょーっ! きっとあいつだっ!
これ見よがしにナメた真似しやがってっ!

俺も堕ちたもんだぜ…… あんな女にいいように振り回されているだなんて。
知力、体力、戦闘力に於いて比類なしとまで言われていたこの俺が……



 全ての始まりは、部族に伝わる太陽エネルギー変換機の見張りの夜。あの夜、 あの女はこの俺の目の前で水晶の瞳というレンズを盗んでいきやがった。あいつは水晶の瞳を片手に、勝ち誇ったように俺を見下ろしながら笑っていた。それは屈辱というものを初めて知った夜だった……

 水晶の瞳が盗まれたお陰でエネルギー供給率は半減。俺はじーちゃんに、族長に水晶の瞳を取り戻すまで帰るなっ、と荒野へと放り出された。それからというもの、俺はあの女の居場所を幾度となく突き止めては追い詰めた。しかし、最後の最後で猫のようなしなやかさで俺の手からすり抜け、緑の瞳を細め、青い髪をなびかせて高笑いと共に姿を消して行く。そして、またすぐに俺の目の前や視界の端に現れる。こんな追いかけっこの繰り返し……

 別に水晶の瞳を他の部族に売り飛ばす訳でもなし、何某かの目的に使う素振りもない。何を考えての行動なのか、さっぱり見当がつかない。俺だってこの世界では、少しばかりは名の知れた男だ。それがあんな女にコケにされてるだなんて……  こんなこと、他の奴らに知られる訳にはいかない! 一刻も早くあいつを捕まえて、水晶の瞳を奪い返すっ! そして、首根っこを取り押さえたその時、今までの恨みを込めて何て言ってやろう……

              …… I LOVE YOU ……

 どこかで何かが聞こえたような気がしたが、俺は構わずにバイクに手を掛けた。 目指すはあいつ! 水晶の瞳! 今度こそ、俺が全てを手に入れる時!

 周りの景色がたちまち溶け出し、超高速で後方へと流れ出した。






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