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 「夜間飛行」
目覚めて最初に見えたのは蒼い月
まるで私を諌めるかのような 細く鋭い三日月

残念ね
今の私を制するなんてことはあなたには出来ない

お節介な月を闇の向こうへと押し込めると
私の髪がふわりと宙に舞い広がる
その髪はいつしか闇に溶け、そして私自身も……


そう、またあの娘なのね……

あの太陽のかけらのような黄金の髪、晴れた空の瞳
どう生まれ変わってこようと一目で分かる太陽の少女


あの娘の腕に抱かれているセピアの髪、琥珀の瞳……
あの娘はあの人に黄昏の君に何をしたの?

琥珀の瞳は硬く閉じられている
私だけを映すはずのその瞳が……


なあに、それは? 銀の十字架?

馬鹿な娘ね
そんなものはただの迷信よ

もうお止めなさいな
必死になればなるほど滑稽よ

さあ、早く目をお覚ましなさい

あなたがその腕に抱くのはその人じゃない
その人は私のもの、私の所有物 (もの) ……


さあ、行きなさい
ここは私の領域、夜の乙女の領域
あなたのような娘がいる場所じゃない

ふふ、あの娘の探すべき人は見つかるかしら?
とても苦労することでしょうね
せいぜい、頑張りなさいな

何故分かるのか、ですって?

だって、あの娘は私のものを横取りしようとしたから
私は朝焼けの青年を隠してしまったんですもの


ほら、また三日月が私を諌めてる……



闇夜の国の物語
知らない方が幸せな愛すべき物語……






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